孫子兵法 計篇(活用と教養のためのヒント)+曹操注

孫子関連

こちらは孫子兵法「計篇」の訳文および解説文です。4種のラベルに応じて以下のような読み方ができます。

 要約 要約をまとめます。初心者の方の理解も助けます。

 活用 活用のためのヒントを抽出します。要点と活用ラベルだけを読み流して、格言鑑賞のような楽しみ方も出来ます。

 格言 よく知られる格言や熟語などを抽出します。

 教養 言葉の意味・解釈の云われ・説の出典などを紹介します。ちょっと深いところも知りたい中級者向けのコンテンツです。教養ラベルだけを流し読みして語彙(言葉のボキャブラリー)を増やす楽しみ方もできます。

底本:宋本十一家注孫子。おまけとして曹操(魏武)の注つき。

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※関連:太平御覧の孫子シリーズ

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参考書籍
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孫子兵法 計編(巻上)

兵は国の大事の概要説明

よくかんがえよう。

計篇ではおもに事前の計画の大切さや注意点について語られます。宋本十一家注孫子では計篇・作戦篇・謀攻篇・形篇までの4篇が上巻に分類されています。

兵は国の大事

孫子曰、兵者、國之大事、死生之地、存亡之道、不可不察也。

孫子曰く、兵は国の大事、生死の地、存亡の道、察せざるべからざるなり。

 要約 【まとめ】兵(軍事活動)は負担が大きい。やるなら熟慮してやるべきです。

 活用 【活用ヒント】失敗しないために良く考えよう。

 教養 篇名は「宋本十一家注孫子」では計篇、「武経七書」の孫子では始計第一、清の孫星衍の校「孫子十家注」では巻一計篇、仙台藩の儒学者・櫻田景迪の校「古文孫子」では計篇第一となっています。銀雀山漢墓の竹簡孫子では篇名部分が欠損していて篇名は不明で、孫子曰兵者國之大事『也』死生之地存亡之道不可不察也。と也の字が間に挟まっているのが特徴です。

※兵=ヘイ。ここでは兵法・用兵などの軍事的行動のこと。

※大事=ダイジ。ここでは「おおごと」の意味。無視できない物事。対義語→小事。

※不可不察也=さっせざるべからざるなり。《孫子》でよく使われる独特な言い回し。察しないことなどできない、察しない手はない、という意味。

関連:兵は国の大事(孫子名言の意味と解説)

五事を以て之を経る

五事を以て之を経るの概要説明

いろいろ考えよう

故經之以五事、校之以計、而索其情。 一曰道、二曰天、三曰地、四曰將、五曰法。 道者、令民與上同意、可與之死、可與之生、而不畏危也。 天者、陰陽・寒暑・時制也。 地者、遠近・險易・廣狹・死生也。 將者、智・信・仁・勇・嚴也。 法者、曲制・官道・主用也。凡此五者、將莫不聞、知之者勝、不知者不勝。

故にこれを経るに五事を以てし、これを校ぶるに計を以てして、其の情を索む。一に曰く道、二に曰く天、三に曰く地、四に曰く将、五に曰く法。

道とは、民をして上と意を同じくせしめ、これと死すべく、これと生くべくして、畏れ危がわざる也。(大義・共通意識・利害一致など)

天とは、陰陽・寒暑・時制なり。

地とは、遠近、険易、広狭、死生(地形の低高)なり。

将とは、智、信、仁、勇、厳(人柄や性質)なり。

法とは、曲制・官道・主用(軍の戦力や様子)なり。

およそ此の五者、将は聞かざること莫きも、これを知る者は勝ち、知らざる者は勝たず。

 要約 【まとめ】熟慮するためによく状況を調べて比較します。これを怠るのでは勝てません。

 活用 【活用ヒント】状況をつかんで把握しよう。

 教養 ※陰陽=インヨウ。ここでは性質の対立するものをさす言葉と解釈。明暗、晴雨、日陰日向、乾湿。あるいは、剛柔、朝晩、太陽と月、拡大と縮小の解釈もあり、行軍篇では日陰日向の意味で登場。《易経・繋辞上》→陰陽は測られざる、これを神と謂う。【中略】陰陽の義は日月に配し、易簡の善は至徳に配す。

※易簡=イカン。簡易、手軽、特別なことをしないであっさりしていること。易経の三義「変易(かわる)・不易(かわらない)・易簡(あっさり)」のうちのひとつ。《易経・繋辞上》→易簡にして天下の理を得ん。

※時制=ジセイ。ここでは過去、未来、現在などの時間や季節のことと解釈。

※曲制=キョクセイ。曲を部隊と見て、軍編成、軍制度。

※官道=カンドウ。官の道、組織の治め方。統治。

※主用=シュヨウ。あるじの部下管理、主軍の管理、編成、準備。《廣韻》→用は使うなり。《荀子・富国》→仁人これ國を用いる。《荀子 楊倞注》→用は為むる(おさむる、治)なり。《國語・巻十六・鄭語》→時至りて用を求む。《韋昭注》→時は難なり、用は備なり。

※死生=生き死にのほかに地形の高低という解釈も出来ます。《淮南子・兵略訓》→所謂地利者、後生而前死、左牡而右牝。(いわゆる地の利とは、後ろに生じて前に死す、左に杜して右に牝す。)《淮南鴻烈間詁/淮南鴻烈解》許慎注→高者為生、下者為死、丘陵為牡、谿谷為牝。(高きものを生と為す、下き(ひくき)ものを死と為す、丘陵を杜と為し、谿谷(渓谷)を牝と為す。)

孫子最古の史料とされる銀雀山漢墓の竹簡孫子では「故經之以五事、校之以計、而索其情。一曰道、二曰天、三曰地、四曰將、五曰法。道者、令民與上同意、故可與之死、可與之生、民弗詭也。 天者、陰陽・寒暑・時制也、順逆兵勝也。 地者、高下・廣狹・遠近・險易・死生也。 將者、知【欠損部分】曲制・官道・主用也。凡此五者【欠損部分】」となっていて、大まかの意味は同じなのですが、キーワードが違う箇所、追加箇所があり、細かなニュアンスが違います。意味の重複している高下と死生(低高の意:淮南子許慎注)は十一家注本で死生の部分にまとめられた格好になっていることがわかります。竹簡孫子→曹操が編纂した孫子→その他派生、という時代の流れの中で、意味は変わらずに文面が変わっていく様子を感じ取ることができる部分でもあります。

計をもってして其の情を索む

故校之以計、而索其情。 曰、主孰有道、將孰有能、天地孰得、法令孰行、兵衆孰強、士卒孰練、賞罰孰明、吾以此知勝負矣。

故にこれを校ぶるに計を以てして、其の情を索む。曰く、主いずれか有道なる、将いずれか有能なる、天地いずれか得たる、法令いずれか行わる、兵衆いずれか強き、士卒いずれか練いたる、賞罰いずれか明らかなる。吾れ此れを以て勝負を知る。

 要約 【まとめ】あらゆる角度から比較して勝負の見通しをつけます。

 活用 【活用ヒント】あらゆる角度で比較しよう。

 教養 ※天地=天の時、地の利のこと(曹操、李筌の注 参照)

之を用うれば必ず勝ち

將聽吾計、用之必勝、留之。將不聽吾計、用之必敗、去之。

将吾が計を聴き、これを用うれば必ず勝つ、これを留めん。将吾が計を聴かず、これを用うれば必ず敗る、これを去らん。(もし吾が計を聴き、これを用うれば必ず勝つ、これに留まらん。もし吾が計を聴かず、これを用うれば必ず敗る、これを去らん。)

 要約 【まとめ】見通し・熟慮の結果を活かせば勝ち、活かさねば敗れます。

 活用 【活用ヒント】とくになし

 教養 将を将とよめば最後の去は除く(処断)という意味になり、将をもしと読めば最後の去るは言葉通りここを去るという意味になります。十一家の注でもどちらにとるか意見が分かれていて、文脈だけ考えても、両者自然です。本文を離れて孫武(孫子)と闔廬(呉王・孫子兵法を渡した相手)の力関係から考えてみても、やはりどちらの可能性を否定することは出来ません。

婦人部隊の錬兵エピソードで命令をきかなかった隊長を処断しているので、前者の読み方が勝るかに見えますが、「史記」孫子呉起列伝や竹簡孫子の見呉王篇では、斉の国から呉に渡ってきた孫武は、そのとき孫子兵法の書物を提出して才能を認められたことになっています。つまり、提出時の孫子は何の任にもついていないので、そのような立場で他国の将軍の去就について触れる言い方は出来ないのではないかという見方も出来ます(孫子:浅野祐一 著 参照)これを考慮しますと、もしという読み方も否定は出来ません。

勢とは利に因りて権を制する也

勢とは利に因りて権を制する也の概要説明

良い要素が多いなら、実戦でも戦いやすい

計利以聽、乃爲之勢、以佐其外。勢者、因利而制權也。

計を利として以て聴かるれば、すなわちこれが勢を為し、以て其の外を佐く。勢は、利に因りて権を制するなり。

 要約 【まとめ】計画・見通しがつけばその時点で大きな力をもつことになります。その力を状況に応じて臨機応変につかうことができれば、有利に動くことができます。

 活用 【活用ヒント】計画・見通し段階で有利であればそれは大きな力。段取り八分。

 教養 ※勢勢篇を参照。

※以て其の外を佐く=常法(一定の方法・手段・パターン)の外(曹操の注)。外に勢を為して勝ちを成すを助ける(梅堯臣の注)。思ふに兵の常法とは、すなわち人に明言することができること(バレバレのパターンのこと)で、兵の勢を利するとは、すべからく敵に対応して為すこと(張預の注)。

※利に因りて権を制するもの=有利な状況に起因した権(はかる・臨機応変・バランス)の制御。状況をはかりながら臨機応変に動くこと。

※権=分銅、はかり器具、はかる、つりあい、平均、常道の外、臨機の処置、ちから、勢力。など幅広い使われ方をしている言葉です。

分銅・はかり、の意の出典例。《礼記・月令》→権概を正す。《鄭玄注》→称る(はかる)鐘(かね)を権と曰う。

常道の外、臨機の処置、の意の出典例。《廣韻》→権は権変なり。常に反して道に合し、又た宜しきなり。

平均、つりあい、バランス、の意の出典例。《廣韻》→権は平なり。《國語・巻第六・齊語》→式りて(のっとりて)権し以て相い応ず。《韋昭注》→式は用なり。權は平なり。政を治めて用うるに民を平均相い應じせしむるなり。

ちから、の意の出典例。《戦国策・齊》→齊に復せんと楚の権を以て田忌の欲するを恐る。《高誘注》→権は勢なり。

などなど。

兵は詭道なり

兵者、詭道也。 故能而示之不能、用而示之不用、近而示之遠、遠而示之近。利而誘之、亂而取之、實而備之、強而避之、怒而撓之、卑而驕之、佚而勞之、親而離之。攻其無備、出其不意。 此兵家之勝、不可先傳也。

兵は詭道なり。故に能なるも不能を示し、用なるも不用を示し、近くともこれに遠きを示し、遠くともこれに近きを示し、利にしてこれを誘い、乱にしてこれを取り、実にしてこれに備え、強にしてこれを避け、怒にしてこれを撓し(乱し)、卑にしてこれを驕らせ、佚(逸脱)にしてこれを労し、親(接触・贈答)にしてこれを離す。其の無備を攻め、その不意に出ず。此れ兵家の勝、先に伝うべからざるなり。

 要約 【まとめ】兵(軍事)は詭道(だます・いつわる・かくす・だしぬく等)です。

 活用 【活用ヒント】勝負事は詭道(だます・いつわる・かくす・だしぬく等)です。

 格言 【格言】兵は詭道なり(兵者詭道也)読み:へいはきどうなり。へいはうらみちなり。等

 教養 ※詭=キ。ここでは偽り・欺き・詐などと解釈。《廣韻》→詭は詐なり。《廣韻》→詭、財物を横するを詭と為す。《玉篇》→詭は欺くなり。謾(あざむく)なり。《廣雅・釈詁二》→詭は欺くなり。《廣雅・釈言》→詭は誑(たぶらかす)なり。

※先に伝えることはできない=相手の変化に応じて行動するものなので、これと決めて伝えることは出来ない(曹操の注)。無備と不意を攻めるのが肝要で、秘める必要があり先に伝えることは出来ない(李筌の注)。

算多ければ勝ち、算少なければ勝たず

算多ければ勝ち、算少なければ勝たずの概要説明

できるかな?できるかな?

夫未戰而廟算勝者、得算多也。未戰而廟算不勝者、得算少也。多算勝、少算不勝、而況於無算乎。吾以此觀之、勝負見矣。

それ未だ戦わずして廟算して勝つ者は、算を得ること多きものなり。それ未だ戦わずして廟算して勝たざる者は、算を得ること少なきものなり。算多ければ勝ち、算少なければ勝たず。而るを況や算無きに於いてをや。吾れ此れを以てこれを観るに、勝負見る。

 要約 【まとめ】計画段階でよい条件がそろっていれば、たたかわずして勝ちを見通すことが出来ます。

 活用 【活用ヒント】準備が肝心。

 教養 ※廟算=ビョウサン・廟堂で計画を練る。古来のならわし。軍儀をひらいて算木(計算用の棒)を用いて戦をシミュレートする。類語:廟戦。《淮南子・兵略訓》→「故廟戰者帝神化者王。所謂廟戰者法天道也、神化者法四時也、修政於境內而遠方慕其德、制勝于未戰而諸侯服其威、內政治也」【中略】「凡用兵者、必先自廟戰。主孰賢、將孰能、民孰附、國孰治、蓄積孰多、士卒孰精、甲兵孰利、器備孰便。故運籌於廟堂之上、而決勝乎千里之外矣。」

故に廟戦とは帝・神化の王。いわゆる廟戦とは天道の法なり、神化とは四時の法なり、境內に政を修めて其の徳は遠方より慕われ、勝を制すに未だ戦わずして其の威は諸侯を服し、内に政を治むるなり。

およそ用兵とは、必ず先に自ら廟戰す。主いずれか賢なる、将いずれか能なる、民いずれか附なる、国いずれか治なる、蓄積いずれか多なる、士卒いずれか精なる、甲兵いずれか利なる、器備いずれか便なると。故に廟堂の上に籌(算木・算筹)を運び、而して千里の外に勝を決めんや。

曹操注(魏武注)本文と訳

関連:兵は国の大事(孫子名言の意味と解説) こちらでは曹操注のほかに十一家の注も見ることができます。

計篇
※ 曹操曰、計者、選將、量敵、度地、料卒、遠近、險易、計於廟堂也。
曹操曰く、計とは、将を選び、敵を量り、地を度り(はかり)、卒を料り(はかり)、遠近、険易を廟堂において計る(はかる)ものである。

※ 清の孫星衍の平津館魏武注本では「遠近、險易」の四字は存在しません。

故經之以五事、校之以計、而索其情。
※ 曹操曰、謂下五事、七計、求彼我之情也。
曹操曰く、下にいわれる五事、七計にて、彼我の情を求めるのである。

故可與之死、可以與之生、而不畏危。
※ 曹操曰、謂道之以教令。危者、危疑也。
曹操曰く、道はこれをもって教令とする。危とは危疑のことである。

天者、陰陽・寒暑・時制也。
※ 曹操曰、順天行誅、因陰陽四時之制。故司馬法曰、冬夏不興師、所以兼愛民也。
曹操曰く、天に順い誅を行うのは、四時陰陽に因りてこれを制するものである。故に司馬法曰く、冬夏に帥を興さざるは、民を兼愛する所以なり。

 教養 ※「冬夏不興師、所以兼愛民也」(要約:冬夏に軍事を起こさないのは、敵味方の民を愛するからである。★補足:負担が大きいから)は司馬法の仁本第一の前半あたりに見えます。

 教養 ※順い=シタガイ・ナライ。従う。習う。※四時=シイジ。四季のこと。※陰陽=昼夜など。※帥=スイ。軍隊。周代では2500人の軍隊。※兼愛=ケンアイ。博愛。区別無く愛すること。《墨子》の主題のひとつ。

地者、遠近・險易・廣狹・死生也。
※ 曹操曰、言以九地形勢不同、因時制利也。論在九地篇中。
曹操曰く、九地形勢と言ともわずは、時制の利に因りてである。九地篇中に論あらん。

※ 「九地篇中」は孫子の11編目の九地篇を指すものです。

 教養 ※九地形勢を以って言ともわずは=言ってることがバラバラなのは。※時制の利に因りて=そのときそのときの状況にあわせて動くものだから。

將者、智・信・仁・勇・嚴也。
※ 曹操曰、將宜五徳備也。
曹操曰く、五徳備うはよき将である。

法者、曲制・官道・主用也。
※ 曹操曰、部曲、旛幟、金鼓之制也。
曹操曰く、部曲、旛幟、金鼓の制である。

※ 清の孫星衍の平津館魏武注本などでは曹操曰の下に「曲制者」の三字が存在。

 教養 ※部曲、旛幟、金鼓=軍隊・旗・太鼓・銅鑼。

故校之以計、而索其情。
※ 曹操曰、同聞五者、將知其變極、即勝也。索其情者、勝負之情。
曹操曰く、五者は同聞にして、将、其の変の極を知るものは、すなわち勝である。其の情を索むるは、勝負の情である。

 教養 ※同聞=ドウブン・ドウモン。ひろく聞き知られた事柄、一般的な話。異聞(珍しい話・逸話)の対義。※変の極=変化の極意。

曰、主孰有道、
※ 曹操曰、道徳智能。
曹操曰く、道徳と智能である。

天地孰得、
※ 曹操、李筌並曰、天時、地利。
曹操、李筌並びて曰く、天の時、地の利である。

※ 李筌・リセンは曹操と同じ十一家のうちの一人です。

法令孰行、
※ 曹操曰、設而不犯、犯而必誅。
曹操曰く、設けては犯せず、犯しては必ず誅す。

吾以此知勝負矣。
※ 曹操曰、以七事計之、知勝負矣。
曹操曰く、七事でこれを計り、勝負を知る。

將聽吾計、用之必勝、留之。將不聽吾計、用之必敗、去之。
※ 曹操曰、不能定計、則退而去也。
曹操曰く、定め計かる(はかる)ことあたわずは、即ち退きて去るものである。

※本文の「将」将軍と解釈すれば計れないものは除くの意味。「将」もしと読めば、計ることができなければ自分が去るという意味。

計利以聽、乃爲之勢、以佐其外。
※ 曹操曰、常法之外也。
曹操曰く、常法の外である。

 教養 ※常法=ジョウホウ。一定のきまり、パターン、いつもの手段。

勢者、因利而制權也。
※ 曹操曰、制由權也、權因事制也。
曹操曰く、権を制する由(由縁・方法・手段)は、事制に因りて権かる(はかる)ものである。

 教養 ※事制=ジセイ。政治的制度、法度。

兵者、詭道也。
※ 曹操曰、兵無常形、以詭詐爲道。
曹操曰く、兵は常形なく、詭詐をもって道をなす。

 教養 ※詭詐=キサ。いつわり、だまし、あざむき、隠し。※詭詐という表現は、北史(南北朝の北朝の正史)巻七九 王世充伝「世充捲髮豺聲、?猜多詭詐。」と三國演義 第19回「布雖無謀、不似称詭詐奸險。」などで登場。

實而備之、
※ 曹操曰、敵治實、須備之也。

曹操曰く、実にて敵を治め、すべからくこれに備うるものなり。

 教養 ※すべからく=ぜひ必要なもの、行うことが大切なこと。

強而避之、
※ 曹操曰、避其所長也。
曹操曰く、其の長所を避けるものである。

怒而撓之、
※ 曹操曰、待其衰懈也。
曹操曰く、其の懈と衰を待つものである。

 教養 ※懈=カイ。おこたり、ゆるみ、なまけ、おろそか。

佚而勞之、
※ 曹操曰、以利勞之。
曹操曰く、利をもってこれを労す。

親而離之。
※ 曹操曰、以問離之。
曹操曰く、問をもってこれを離す。

 教養 ※問=たずねる、しらべる、おとずれる、見舞う、手紙、贈る。

攻其無備、出其不意。
※ 曹操曰、撃其懈怠、出其空虚。
曹操曰く、其の懈怠を撃ち、其の空虚に出る。

 教養 ※懈怠=カイタイ・ケタイ・ケダイ。なまけおこたる。

此兵家之勝、不可先傳也。
※ 曹操曰、傳、猶洩也。兵無常勢、水無常形、臨敵變化、不可先傳也。故料敵在心、察機在目也。

曹操曰く、伝うるに、なお洩のごときものである。兵に常勢なく、水に常形なく、敵の変化に臨みて、先に伝えることはできないのである。故に敵を料る心ありて、機を察する目あるのである。

※ 「兵無常勢、水無常形」の言葉が孫子の虚実篇終盤に見えます。清の孫星衍の平津館魏武注本などでは「兵無常勢、水無常形」でないものもあります。

 教養 ※洩=セツ・エイ。もれる、もらす。さる、除く。漏洩。

夫未戰而廟算勝者、得算多也。未戰而廟算不勝者、得算少也。多算勝、少算不勝。而況於無算乎。吾以此觀之、勝負見矣。
※ 曹操曰、以吾道觀之矣。
曹操曰く、吾れ道をもってこれを観るものである。

2、作戦篇につづく