宋元料理のおいしいレシピ398選「中国の食譜」の魅力を紹介

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今回は宋代元代の食材・調理法・レシピをまとめた「中国の食譜」のおすすめポイントをお伝えします。

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「中国の食譜(東洋文庫594)」 おすすめの概要

ボリューム
読みやすさ
くわしさ
お買い得感
総合
  • 編訳:中村喬
  • 発行:平凡社
  • 巻数:全1巻(東洋文庫594)
  • 総頁:400ページ(初版1刷)
  • 形状:函入、小B6判、栞紐つき
  • 定価:2900円+税

読んでおいしい料理書の訳注。感覚的に意味がわかるルビが楽しい。

概要
南宋・林洪《山家清供》、元・著者不明《居家必用事類全書・飲食部》、推定南宋・呉氏《中饋録》の訳注本。むずかしい言葉の意味解説をルビで補う方式がとられていて、読み手の負担が少なく、スラスラ読み進めることができる工夫がこらされています。読んでおいしい現代語訳。

原文や書き下しの掲載は無く、現代語訳のみの掲載ですので、訓読が得意でない方でもストレスフリーにすらすら読み進めることができます。注釈も簡易にみじかくまとめられていて、そういった特性をみると広く一般向けを意識した本だと言えそうです。

料理という題材からも、政治的なネチネチした要素があまり無いものですから、そういった点でもさっぱりとしていて読みやすいです。

もうひとつ本書の特徴的な魅力としてルビ(ふりがな)が挙げられます。たとえば精肉(あかみ)だとか、大料物(こうしんりょう)だとか、糖滷(さとうじる)自然汁(しぼりじる)といった具合に、わかりにくい単語が、そのレシピ内で何を意味しているかということを、ザックリとしたジャンルを示すふりがなでガイドしてくれます。注釈の欄にいちいち視点を動かさなくても内容がわかるので読みやすい(グッジョブ)です。

おすすめのポイント

おすすめポイントをお知らせしたいパンダの料理人

さらに細かく「中国の食譜(東洋文庫594)」の魅力についてお伝えします。(参考:1995年11月9日発行 初版1刷)

たとえばこんなレシピ

たとえば以下の様な調理法を見て取ることができます。本書に掲載されている398項目のうち、4つほどを抜き出してご紹介します。

おなかペコペコの光武帝が食べた豆がゆ

茶碗に盛られたごはんとうめぼし

まず南宋のころの書《山家清供》からひとつ。

豆粥レシピ:v1.0
  • 1:お好みの豆をホロホロに崩れるまで煮る。
  • 2:お粥にまぜて煮る。
  • 3:煮えたら食べる。
豆粥レシピ:v2.0 《集註分類東波先生詩25・豆粥》
  • 1:赤豆(あずき)(ミルクスープ)くらいにやわらかく煮る。
  • 2:お粥にまぜて煮る。
  • 3:煮えたら食べる。

後漢の光武帝が挙兵後、餓えの苦境にあったとき、馮異(人名:フウイ)に豆粥をもらい、即位後にその恩に報いたエピソード、並びにそれにちなむ蘇軾(蘇東波)の詩「豆粥」をテーマにした随筆のなかのレシピです。詳細は本書内の注釈で触れられています。

豆粥レシピ:v3.0 《晋書・石崇伝》
  • 1:あらかじめ豆を粉末にしておく。
  • 2:お粥にサッと溶かして出来上がり。

そして、こういう即席料理は素早くできるが風情というものがない、として随筆のオチにしています。

単なるレシピだけでなく、このような小話も楽しむことができるところも魅力です。

筵上焼肉事件

肉にかぶりつくライオンの挿絵

つぎに《居家必用事類全書・飲食部》からひとつ。パッと見、なんとなく物騒なタイトルですが、これは(むしろ)の上、つまり席上・宴席で肉を焼くことの要件をリストアップしたものです。おいしい料理をお出しする為の調理法のコツを記した、お料理メモのようなものです。

肉を焼くときのコツ:あぶり肉編
  • 羊の膊・カタ肉→ 水煮してから焼く
  • 羊の肋・あばらにく→ 生から焼く
  • (のろ、シカ科)、鹿の膊・カタ肉→ 半煮してから焼く
  • 黄牛の肉→ 水煮してから焼く
  • 野雉(きじ)→ 脚児(ももにく)を生から焼く
  • 鵪鶉(うずら)→ (ぞうもつ)を取り去って生から焼く
  • 水扎(水鳥、カイツブリ)、兎→ 生から焼く
  • 羊の苦腸(しょうちょう)蹄子(ひづめ)→ 火燎(毛を焼いて処理)しておく
  • 羊の(かんぞう)腰子(じんぞう)膂肉(せにく)→ 生から焼く
  • 羊の耳、舌、黄鼠(ハタリス)沙鼠(スナネズミ)塔刺不花(初版では未詳)膽灌脾(初版では未詳)→ 生から焼く
  • 羊のちぶさ→ 半煮してから焼く
  • 野鴨、川鴈(ヒシクイ)→ 水煮してから焼く
  • 督打皮(初版では未詳)→ 生から焼く
  • 全身(まるごと)の羊→ 爐(炉)で焼く
  • 備考:全身焼(まるやき)以外は串焼きする。油、塩、(みそ)、香辛料、酒、醋(酢)などでこしらえた薄ときの小麦粉のコロモに浸し、炭火の上で手を休めずにひっくりかえしながら焼く。焼けたらコロモは剥ぎ取ってお出しする。

この料理メモは元代に著された《居家必用事類全書》の項目に掲載されています。羊に関してかなり細かい部位まで調理メモがあるのは、モンゴル帝国・元朝(モンゴル族系・ウイグル族)、西夏(羌族・タングート族)、遼朝(契丹人・耶律氏)、金朝(女真族・満州族)など、羊肉文化の発達していた、北方系の民族の影響を受けたからなのでしょうか。

このように細かくて合理的な調理法についても数多く見ることができます。

撒拌和菜:胡麻と山椒の万能ドレッシング

サラダのイメージ

つぎは南宋のころの書と推定される《中饋録》からひとつ。

あえもの用ドレッシング
  • 1:麻油(ごまあぶら)花椒(さんしょう)を加え、12回煮立たせてとっておく。
  • 2:使用の直前にベースのタレをお椀にとり、それに醤油、酢、少々の白糖を加え、味をととのえる
  • 3:できあがり
  • 備考:油料理にこれをちょっとかけると絶妙のお味に。白菜・モヤシ・セリなどにあえるなら、それらの野菜を熱湯でゆがき、水に投じて、食べる直前に水切りし、このドレッシングをあえる。野菜は新鮮なまま黒ずむこともなく、また歯当りがよい。

読むだけで身体がポッポしてくる美味しそうなドレッシングのレシピです。こういった現在でも通用する実戦的なレシピも数多く見ることができます。

酥蜜餅&酥餅方:クッキー

クッキーのイメージ

最後に《居家必用事類全書・飲食部》と《中饋録》とで共通するレシピ。

酥蜜餅:クッキー:居家必用バージョン
  • 前提:小麦粉を十斤(約5.96Kg)に対して、蜜が三両半(約130g)の比率とする。
  • 1A:羊の脂脂(ラード)を使用の場合。春なら四両(約150g)、夏なら六両(約224g)、秋冬なら三両(約112g)用意する。
  • 1B:(ぶた)脂脂(ラード)を使用の場合。春なら半斤(約298g)、夏なら六両(約224g)、秋冬なら九両(約336g)用意する。
  • 2:AかB、どちらかを溶かして、用意した蜜(約130g)に入れかきまぜる。
  • 3:それを用意した小麦粉(約5.96Kg)に入れ、こねてあわせる。
  • 4:生地を伸ばして型でぬく。
  • 5:紙を敷いたオーブン皿に、型抜きした生地をのせ、ゆる火で焼く。
  • 6:できあがり。

上記のレシピはかなり大量の小麦粉を使っていますね。小麦粉を伸ばすための水分脂分が少ないので、出来上がりは粉っぽくてバサバサな感じになりそうです。ためしに誤字だと仮定して、下記と同じ小麦粉を一斤(約596g)、あるいは10両(約373g)とするならば良い感じになりそうです。

酥餅方:クッキー:中饋録バージョン
  • 前提:酥油(バター)を四両(約150g)、蜜を一両(約37.3g)、小麦粉を一斤(約596g)を用意する。
  • 1:それらをこねて生地にする。
  • 2:型抜く。オーブンで焼く。
  • 3:できあがり。
  • 備考:バターのかわりにラードを用いてもよい。蜜を二倍用いるとさらによい。

ショートブレッドの挿絵

この分量であれば油分で膨らみはしますが、水分がないのでデンプンが糊化せず、粘り気が出ません。水分を用いないクッキーということであれば、スコットランドのお菓子「ショートブレッド」のような、大塚製薬「カロリーメイト」みたいな、あのようなホロホロした食感が楽しめそうです。

こういうお菓子類のレシピも見ることができます。当時の分量についての換算表も本書に掲載されているので安心です。

オススメのまとめ

このほかにも当時の漢方薬膳・魚料理・乳製品・麺類・油料理・漬物・果物などに関する調理法があります。これら全部で398項目ありまして、ひとつひとつをイメージしながら読んでいきますと、結構な時間を要することになります。そういった理由で、冒頭で触れた通り、あっさりとして読みやすい内容でありながらも、たっぷりとしたボリュームを感じることができます。

こんな人にオススメ
  • 歴史にあらわれる料理が好きな人
  • 当時の民間習俗に興味がある人
  • 当時の食材に興味がある人
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