肉鮓:ぴりり酸味のヘルシー冷しゃぶ(ラム・豚)《中饋録》訳注04

中饋録

※ このページは《中饋録》肉鮓の原文、書き下し、注釈、現代語訳、現代的レシピを掲載したものです。

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【レシピ】ぴりり酸味のヘルシー冷しゃぶ(ラム・豚)

肉をしゃぶしゃぶしているイメージとパンダの料理人

中饋録(ちゅうきろく)》にある肉の湯通しレシピを紹介します。今回は肉を薄く切ったものと解釈して、冷しゃぶのような料理をイメージしてまとめてみました。油をつかわないヘルシー肉料理の歴史的レシピです。

じゅんびするもの
  • 猪(豚)・ラム肉など:600g
  • 鍋と熱湯:湯通しできるくらいの水量
  • 酢:約5g(小さじ1)
  • 塩:約15g(大さじ1)
  • 花椒油・藤椒油・しょうが系・カルダモンなどの香辛料:お好みで少々
  • お料理スタート
  • STEP.1
    肉をきる
    お好みの精肉を用意し、平らに切り分ける。(カット済みの肉でもOK)
  • STEP.2
    繊維を切る
    叩いたり切れ目を入れたりして肉の繊維を切る。(カット済みの肉はそのままでOK)
  • STEP.3
    薄切り
    好みの肉の厚さに薄切りする。(カット済みの肉はそのままでOK)
  • STEP.4
    湯通し
    肉を熱湯で湯通ししたら、ザルや布などで水気をしっかりとる。
  • STEP.5
    味付け
    酢・塩・香辛料を混ぜたもので、サッと味付けすればできあがり。
  • 完成

【原文・白文】《中饋録》肉鮓

呉氏《中饋録》脯鮓

肉鮓

 説郛の原文 

生燒猪羊腿精批作片以刀背勻搥三兩次切作塊子沸湯隨漉出用布内扭乾每一斤入好醋一盞鹽四錢椒油草果砂仁各少許供饌亦珍美

 古今図書集成の原文 

(説郛本とおなじ)

 注釈 明《説郛》巻九十五。清《古今図書集成》経済彙編、食貨典、飲食部、彙考三。に《中饋録》収録。

書き下し・注釈

猪羊の(もも)生燒(なまやき)し、精を批して片に作り、刀の背を以て三兩次勻く搥して、塊子に切るを作す。沸湯に隨し、布の内を用い漉出(こしだ)して扭乾す。一斤毎に好醋一盞、鹽四錢、椒油、草果、砂仁を各少許(しょうきょ)入れ、饌に供するも亦た珍美。

注釈

=酢のこと。/《説文解字》許慎注→鮓、菹也。《説文解字》→菹、酢菜也。

生燒=なまやき。赤身がいくらか残るくらいに焼き上げること。ロースト。

=えり分けたもの。えり分けること。ここでは食用に使える精肉の部分、皮などを外した肉の部分を指します。/《説文解字》→精、擇也。《説文解字》→擇、柬を選ぶ也。

=ここでは()ぐ事。《韻會》→削也。

三兩次=二度三度。数回。

勻く搥して=勻は均、搥(槌)は捶に通じ、ひとしく棒で撃つ、まんべんなく叩くことを指します。/《韓愈詩》→又與捶通。《説文解字》→捶、以杖擊也。

塊子=ちいさいかたまり。

=ここでは沸いた熱湯にとおすこと。

漉出=こしだす。ここでは熱湯にとおした肉の水気をとること。

扭乾=ねじって乾かすこと。しぼること。

一斤=重さ。宋元の時代の一斤(16両)=596.82gほど。

好醋一盞、鹽四錢、椒油、草果、砂仁=好醋は食酢のこと。一盞(10分)は宋元の時代で3.73gの重さ。鹽四錢は塩14.92g。椒油は花椒油や藤椒油のこと。草果と砂仁はショウガやカルダモンのような香辛料で、詳細は(《中饋録》蟹生の注釈)を参照ください。

少許=ショウキョ。すこし、ちょっとばかり、少々という意味。

=食器、食のお供、食事のこと。ここでは「饌に供する」と捉えて、食卓に出すという意味に解釈。/《説文解字》→饌、具食也。《玉篇》→飯食也。

亦た珍美=亦たは、ここでは「それもまた」「やはり」などと解釈できます。珍美は珍しい美味と解して、珍味のことを指します。食べ物に対する珍美という熟語は、古くは、北魏の正史・魏収《魏書》巻六十八・甄琛列伝に「每得魚肉菜果珍美口實者」という使われ方をしています。

現代語訳

猪(豚)や羊のモモ肉を赤身が残るくらいにローストして、精肉をひらたく削ぎ、包丁の背でまんべんなく二度三度たたいたら、小さく切り分けます。その肉を熱湯にとおし、肉をこし布などで包み、しぼって水気を取ります。味付けの参考としては、肉600gほどに対して、酢を4g(小さじ1杯弱)、塩を15g(大さじ1)、好みの香辛料(花椒油・藤椒油・しょうが系・カルダモンなど)を少々加えて味付けすると、美味しく食することができると思います。

解説と考察

全体を見ると、今回のレシピでは油を使っていないのでヘルシーな肉料理といった印象をうけます。

たたきの行程の意味は、肉の繊維を切って味通しを良くし、また、加熱による肉の収縮を防止する効果が有るためです。たたきではなく、包丁で切れ目を加えても同じ効果があります。

切り分け方としては、薄く切れば「しゃぶしゃぶ」のような食べ方ができそうですね。この場合は一度水切りしているので「冷しゃぶ」に近いイメージです。ブタ系は細菌が怖いので、肉はしっかり加熱しておいたほうがよいでしょう。

水気をとる方法としては、布でしぼる他に、ザルで水切りを行う方法もありますが、しっかり水が切れていないと、食器のそこに水がたまってビチャビチャしてしまいますので、「冷しゃぶ」としてはありがたくない展開になります。今回の記述でもしっかり布を指定しているのは、そういう意味も有るのでしょう。

酢・塩・山椒・ショウガなどの味付けは、現代的な感覚から考えてもとても相性がよく、ピリッとして美味しそうです。

600gというボリュームと「饌に供する」という字面から、このレシピは個人でなく、何人かのお客様に向けての料理なのだとイメージすることができます。

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