古典原文を伝える方法の特徴・使いやすさランキングTOP3

中国古典を日本語として人に伝える方法には色々な種類があります。今回はそれぞれの方法の特徴と、メリット・デメリットをまとめてみました。巻末には古典ぱんの独断による総合ランキングもあります。

定義

上はおおもと。下は普及。

■原文の定義

ここでは発掘物や発見物を、わかりやすい文字に整理したものを原文としています。原文の見た目をギリギリ妨げない句読点つきの物も原文の範疇としています。

さっくり部門:ノミネート選手

■凡例:さっくり部門では、お手軽な手段をノミネートしてみました。

例として『広出猟、見草中石、以為虎而射之。』という原文を人に伝える手段について見ていきます。

ざっくり伝える

ヒロシが虎だと思って石を射っちゃったらしいよ。あっはっは。

わかりやすさ
正確さ
お手軽度
サービス度

細かい部分は置いといて、ざっくり人に内容を伝える手段です。詳細は伝わりませんが、方式にとらわれず自由な言葉で伝達でき、工夫次第でインパクトのある言葉で興味をひくことも出来ます。

メリット手間いらず。インパクトを出せる。

デメリット正確さを欠く。

現代語訳のみ

李広が猟に出かけ、草の中の石を見て、虎だと思って弓を射た。

わかりやすさ
正確さ
お手軽度
サービス度

邪魔にならない程度に自分の解釈を含め、整理して内容を伝える手段です。正確に伝えているかどうか読み手には判断できませんが、それは逆に読み手の考える負担を減らしてあげられるサービスにも繋がります。

メリットお手軽。見た目スッキリ。目にうるさくない。

デメリット訳者によっては正確さを欠く。

原文+ざっくり伝える

広出猟、見草中石、以為虎而射之。

ヒロシが虎だと思って石を射っちゃったらしいよ。あっはっは。

わかりやすさ
正確さ
お手軽度
サービス度

軽めの古典サイト・歴史サイトによく見られるスタイル。読み手に判断材料を提供しながら、自由な言葉で伝える手段です。原文を出すことで、分かる人には細かいニュアンスを伝えられますし、それでいて自由にやれる気軽さも兼ね備えます。ただし原文を出したことによって、どういった意図を持って訳しているのか、訳者の思考が読み手にバレます。

メリットちょっとカッコいい。原文を扱いながらも気軽にやれる。

デメリットざっくり訳を求めている人にとって、原文は目にうるさい。原文を求めている人にとって、ざっくり訳は目にうるさい。バランスはよくない。

出典明記+ざっくり伝える

《史記・李広伝》より

ヒロシが虎だと思って石を射っちゃったらしいよ。あっはっは。

わかりやすさ
正確さ
お手軽度
サービス度

目にうるさい要素を片方削った形です。原文が知りたい人は手がかりを示すから自分で探してね、という方法です。原文を一部抜粋して扱いたいとき等に、お手軽で便利な手段です。書き手は楽ですが、読み手に原文を追うという負担を与えることになるので、サービス度は低いです。

メリットお手軽。

デメリット訳者によっては正確さを欠く。

原文+現代語訳

広出猟、見草中石、以為虎而射之。

李広が猟に出かけ、草の中の石を見て、虎だと思って弓を射た。

わかりやすさ
正確さ
お手軽度
サービス度

軽めの書籍によくみられるスタイルです。訳者の解釈を含むので、原文の正確なニュアンスを伝えるものではありませんが、読み手へのサービスとして原文も提供しているので、読み手にその場で補完してもらうことも出来ます。

メリット読み手への判断材料を多く提供。バランスが良い。

デメリット作成が手間。文字量が多くてちょっと目にうるさい。

出典明記+現代語訳

《史記・李広伝》より

李広が猟に出かけ、草の中の石を見て、虎だと思って弓を射た。

わかりやすさ
正確さ
お手軽度
サービス度

軽めの書籍、あるいは古典は主テーマではないけど、部分的に古典を用いるような書籍にみられるスタイルです。さきほどの目にうるさいデメリットを解消した形です。原文を求めるくらいのマニアックな人は、出典さえ示しておけば自力で追う能力があるので、原文を併記しなくても実はそれほど困りません。そういう意味では、マニア向けにサービスを提供しながら、見た目をシンプルにできるというバランスの良さがあると言えます。

メリットお手軽。目にうるさくない。バランスが良い。

デメリット出典を追う手間が発生する。

がっつり部門:ノミネート選手

■凡例:がっつり部門では、手の混んだ手段をノミネートしてみました。

書き下しのみ

広、出でて猟し、草中の石を見て、以て虎と為して之を射る。

わかりやすさ
正確さ
お手軽度
サービス度

古典の全文を扱うような重めの書籍で、且つ、あまり文字数を多くしたくない場合にみられるスタイルです。原文のニュアンスをある程度保ちながら、日本語に近づけていく技術を「訓読」といいます。書き下しはその訓読のうちの一工程になります。書き下しから原文に復元する技術を「復文」といい、通な読み手は「復文」の技術をつかい、書き下し1つで原文と日本語訳の両方をカバーすることができます。

メリットお手軽。通にとっては実はバランスが良い。

デメリットライトな読み手はついて行けない。

原文+書き下し+現代語訳

広出猟、見草中石、以為虎而射之。

広、出でて猟し、草中の石を見て、以て虎と為して之を射る。

李広は猟に出て、草の中に石を見ると、それを虎だと思って弓を射た。

わかりやすさ
正確さ
お手軽度
サービス度

古典の全文を扱うような重めの書籍で、且つ、文字数をたっぷりつかえる場合にみられるスタイルです。元となる原文、中間の書き下し、普及用に日本語訳を備え、幅広いニーズに応えることができるバランスの良い方法です。ただし全体の文章量が増え、書き手の負担は増えることになります。

メリットバランス型。幅広いニーズに対応。

デメリットつくるのが大変。

原文+符号+点仮名+書き下し+現代語訳

広、出でて猟し、草中の石を見て、以て虎と為して之を射る。

:李広は猟に出て、草の中に石を見ると、それを虎だと思って矢を射た。

わかりやすさ
正確さ
お手軽度
サービス度

教材などでよく見られるスタイルです。原文をどのように解釈したか、その工程の流れを全て明らかにする方法です。「原文+書き下し+現代語訳」のバランスの良さに加えて、「訓読の手引き」サービスも盛り込んだ究極のかたちです。サービス満点ではありますが、そのぶん作り手の負担は非常に大きくなります。

訓読の心得が少しでもあれば、返り点や送り仮名が無くても、書き下しのみから解釈の流れを読むことができるため、「訓読の手引き」サービスの需要は実際のところ、あまり多くはないでしょう。ですので、一般の書籍でここまで盛り盛りのサービスをしているモノは少ないです。

メリットあらゆるニーズに応えられる究極のかたち。

デメリットつくるのが非常に大変。くどい。符号類が目にうるさい。

原文+符号+点仮名

わかりやすさ
正確さ
お手軽度
サービス度

教材の問題集や、ハイエンドな辞典の引用文などでよく見られるスタイルです。原文の配置を崩すことなく訓読の手引きをする方法です。原文の風合いを残すことができるため、原文配置の美しさも見せたい場合、具体的に言うと漢詩の紹介と相性が良いかたちです。

メリット原文の見た目を保てる。

デメリット訓読技術がないと読めない。

まとめランキング発表・使いやすさランキングTOP3

■おすすめ3位

原文+ざっくり伝える

原文紹介と普及のハイブリッド。

■おすすめ2位

出典明記+現代語訳

できることなら楽をしたいですよね。

■おすすめ1位

原文+書き下し+現代語訳

無難が一番!多少のクドさには目をつぶりましょう。

■通好み特別賞

書き下しのみ」「原文+符号+点仮名

シンプルに行きたいならこちら。時代はミニマルです。

おすすめ書籍 漢文訓読入門