「中国社会風俗史」古代から近世までの民俗と社会のまとめ書

今回は、古代から近世の文献を幅広くあたり、社会状況や民俗全般をまとめ、その変遷や起源の考証が加えられた書、尚秉和《歴代社会風俗事物考》の邦訳注本「中国社会風俗史(東洋文庫151)」のおすすめポイントをお伝えします。

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「中国社会風俗史(東洋文庫151)」 おすすめの概要

ボリューム
読みやすさ
くわしさ
お買い得感
総合
  • 原著:尚秉和注1尚秉和(1870~1950)
  • 編訳:秋田成明注2秋田成明(1910-2005)
  • 発行:平凡社
  • 巻数:全1巻(東洋文庫151)
  • 総頁:384ページ(1997年初版18刷)
  • 形状:函入、小B6判、栞紐つき
  • 定価:2700円+税

古代から近世までの文化・社会制度・民俗全般のまとめ書が和訳で読める。

概要
本書は単なる和訳ではなく、原書の章配列を編集し、読みやすいかたちにまとめられ、原書の出典誤りを正して補い、不足の箇所は注記も加えられています。また、ポイントとなる箇所には図版も加えられており、読者の理解を助けます。

尚秉和《歴代社会風俗事物考》の全訳書、秋田成明《支那歴代風俗事物考》の約八割を文庫用に編集したものが本書になります。

全訳書は1943年、戦時の渦中の厳しい事情の中で出版注3秋田成明《支那歴代風俗事物考》、1943年8月出版、出版社:大雅堂、517ページ。され、内容も満足な内容ではないから、文庫本として出版するにあたって良き是正の機会を得られたと、あとがきの中で述べています。

全訳書の方は入手しにくい本なので、八割抜粋とは言え、こういった有意義な書を、文庫本というかたちで気軽に読むことができるチャンスが有るというのはありがたい話です。

同内容を各文献から拾い読もうとすれば、途方もない時間が削られるボリュームです。それが数日で読み切れるかたちにまとめられているのが本書の魅力です。

おすすめのポイント

オススポイント

本書で扱っている内容は非常に広範囲に渡っていますので全てはフォローできません。ここでは、そのうちの印象的なポイントのみを紹介していきます。

第二章 衣服

王様衣装のコスプレうさぎ

本書31p(初版18刷)あたりに、春秋時代の衣服「深衣」の事が記されています。印象的なのが、挿絵として「深衣」の各部の名称と寸法を示した展開図が加えられています。

これを見ていくと「深衣」の全体のサイズ感をつかむことができ、各部位の機能やディティールが見えてきます。

そのほかにも春秋戦国の庶人の衣服「布衣注4布衣・ほい。」、漢代・六朝・唐宋のころの衣服などについて、典拠出典つきで細かくまとめられています。

第三章 履物

衣服は絵画などのイメージが刷り込まれていて、詳しくないひとでも想像のつく部分が多いかも知れませんが、履物に関してはよくわからないという人も多いのではないでしょうか。

この章では、春秋戦国・漢代・六朝・唐宋それぞれの靴の素材だとか、脱ぎ方の作法や、各部位の機能などに関することが、典拠出典つきで記されています。

これを見ていくと、尚秉和がのびのびと考察を展開しているので、それぞれの時代の靴の文化が想像できるだけでなく、純粋に当時の感性で書かれた読み物としても興味深くみることができます。

第四章 飲食

あつものを食べるウサギ

春秋戦国に何の動物の肉が食されていたとか、調理法だとか、味付け法などが記されています。そのほか食事作法・食器などについても典拠出典つきで記されています。

この章の出典としては《周礼》《論語》や正史などメジャーな文献が多く、現代の専門的な解説本を読んでおられる方だと、薄い内容に感じるかも知れません。

第七章 厠

お行儀のよい本だとなかなか語られないのがトイレ事情です。そもそも厠について語られた本というものが少ないのですから仕方ありませんが、それでも少ない素材から力いっぱい話を広げようとしてる様子が見えます。

漢の高后の呂雉が戚夫人に対して行ったあの残忍なエピソードなども交えて、いろいろな角度から各時代のトイレ事情を解き明かします。

第十章 火・水・木の利用

種火を持つうさぎ

火の起こし方・水源の確保・木材の利用法などに関することが記されています。木炭に関して既に周代から使われていて、当時から高度な生活を送っていた様子が見えてきます。

しだいに石炭が使われる様子が記され「その後の火起こしに電気がこれに代わると予測されているが、果たしてどうだろうか。」と述べているのが、電気バリバリな現代人としては印象的な一文です。

第二十章 学校

ここでは「制度」ではなく、学校の起居・飲食・清掃・応待・読書などの「実態」を探っています。

古代の学問といえば儒家につながるので、儒家的なかっちりした風習が浮かび上がっています。

第二十二章 結婚

新郎新婦

各年代の婚姻に関する風習やエピソードが記された章です。

後漢の袁隗が、学者の馬融の娘をめとり、結婚初夜に議論を戦わせ、袁隗が押し負けて沈黙すると、外で聞き耳を立てていた野次馬も感服した。というちょっと滑稽なエピソードから、新婦を密かに窺う習俗を引き出しています。

第三十四章 各種の遊戯

ボール遊びの「打毬」、五目並べのような遊戯「格五」、すごろくのような遊戯「博」、囲碁、象棋、カルタの「牙牌」、闘鶏、セミ捕りなどに関することが、典拠出典つきでまとめられています。

第三十五章 社会雑事

妖面なきつね

養蜂の項では古代から続くものであろうと考察し、記録のある漢代から以降に関しては、詳しい製法を文献から抽出しています。

糖の項では、唐以前の糖はすべて液状の糖で、唐太宗がインド経由で製糖法を仕入れたのが中華にとっての砂糖の始まりだとしています。

狐の祟りの項では、漢魏以来の小説で盛んに現れていることを示し、《莊子》や、狐が虎の威を借る《戦国策》などから、当時から狐を妖獣としてとらえられていたのだとしています。

その他、22項目の雑事について、典拠出典つきでまとめられています。

オススメのまとめ

このような各時代の社会状況や民俗全般、広範囲に及ぶ事物のまとめを、和訳で読むことができるのが「中国社会風俗史(東洋文庫151)」の魅力です。

こんな人にオススメ
  • 民間習俗モノが好きな人
  • 人物エピソードが好きな人
  • 社会や文化を一冊で知ることができる本を求める人
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1. 尚秉和(1870~1950)
2. 秋田成明(1910-2005)
3. 秋田成明《支那歴代風俗事物考》、1943年8月出版、出版社:大雅堂、517ページ。
4. 布衣・ほい。